租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

財政学

「社会保険料と年金制度」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第7章第1節「社会保険料と年金制度」。 本節は本書の中で最も古く書かれた論文(1997年)であり、正直本書の他の部分との関りは薄いです。 妥当な年金制度が主に経済的な観点から議論され、その議…

「議会の財政権」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第5章第2節「議会の財政権」。元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。 前節の「租税法律主義は議会の財政権に基づく」という指摘を敷衍し、歴史的な視点と外国の学説を通じて「…

「議会の財政・金融権限と名誉革命」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第5章第1節「議会の財政・金融権限と名誉革命」。 財政と合わせて金融の議会的統制を考えることの重要性を説いた節です。 特に財政軍事国家という中世ヨーロッパの観念をもとに金融制度がイングラ…

「主権国家の成立と課税権の変容」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第2章第1節「主権国家の成立と課税権の変容」。 驚異の外国文献炸裂セクション。本節の初出は2014年の『租税法と市場』ですが、買ってきて「よーし頑張って読むぞー」と思った気持ちが序盤の本論文…

「憲法が前提とする憲法以前の法概念・法制度」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第3章第2節「憲法が前提とする憲法以前の法概念・法制度」。 憲法学でいわゆる制度的保障として議論されるような事柄を租税法学の「借用概念」の議論を援用することで少し異なる見方で整理する面白…

「財政法の2つの側面」「財政の再定義」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第1章「財政法の2つの側面」と「財政の再定義―財政法の実体法化と経済学」。後者の元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。 この第1章では議会の財政権と国家の財産権を論じるの…

「金銭債権と租税」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第7章第2節「金銭債権と租税」。 他の箇所でも度々述べられているように租税債権は本質的には(民法の)金銭債権であること、制定法の解釈には普通法がベースにあることが確認されます。 そうした…

「財政制度と法の関わり」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第4章第1節「財政制度と法の関わり」。 本節では財政の法的な検討として手続き的・行政法的な検討だけでは不十分で、実体法的・私法的な把握が大事だということで「国家活動の概念図」(165頁)な…

「財政法と憲法・私法」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第4章第2節「財政法と憲法・私法―財政の法的統制」。元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。 本節は、財政に関する法的統制を考えるにあたって憲法や財政法の国家内部の手続きを…

「財政法の私法的構成」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第2章第2節「財政法の私法的構成」。 本節は憲法・行政法の文脈で議論されがちな財政が「国民に対する国家の対外的な関係においては基本的に民法や商法により規律される法領域であるという点につい…

「制定法と普通法」『財政と金融の法的構造』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より本日は第3章第1節「制定法と普通法」。 元論文はジュリストの「制定法の解釈と普通法の発見―複数の方が併存・競合する場合の法の選択としての「租税法と私法」論(上)(下)」ですね。 個人的には勝手に思…

「貨幣制度と法」『財政と金融の法的構造』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第6章1節「貨幣制度と法―法・言語・貨幣のソフト・ローの観点からの共通性」。元論文はネット上でオープン(PDF)ですね。 中里先生ご自身が最後に「とりとめもなく色々述べてきた」と書かれている…

「財政と国家活動に関する1つの試論」『財政と金融の法的構造』

中里実先生の『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より「財政と国家活動に関する1つの試論」という節(論文)。 はっきり言って自分の手には余る難しい本(けど憧れるし読みたい本)ですので、ところどころつまみ食いしつつ読んでいます。思いついたとき…

〔書籍〕『ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか』

浅妻章如『ホームラン・ボールを拾って売ったら二回課税されるのか』(中央経済社2020) 1.二重課税を鍵に課税を考える エッジの効いた知性と発言という印象のある、浅妻章如立教大学教授(ウェブサイト・Twitter)による初の単著だそうです。 タイトルは…

〔書籍〕神野直彦『経済学は悲しみを分かち合うために』

先日とある場所で財政学者(東京大学名誉教授)の神野直彦先生の講義を受ける機会があり、そこで神野先生が最近『経済学は悲しみを分かち合うために』という書籍を上梓されたことを知りました。 神野先生といえば言わずと知れた財政学分野の権威です。私も学…