租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

『数理法務概論』を読む(5)ファイナンス

 『数理法務概論』、第5章はファイナンス

 

 

第5章 ファイナンス

1 概説

2 ファイナンス理論の基礎

3 貨幣の時間的価値

4 コーポレート・ファイナンスの重要概念

5 資産の価格決定

6 読書案内

 

 良い悪いは別にして、どうしてこういう書き方になったのかいまひとつよくわからない章。

 特に第3章までは(1)著者自身の言葉で(2)法律家という視点を十分に踏まえながら展開されていた議論が、本章ではファイナンスに関する重要論文の引用を長く取り、ファイナンスにおける重要概念を(ほとんどファイナンスプロパーの目線で)説明しているようなスタイルです。*1 会計の章に続いてケーススタディが日本版になっているのは親切ですが解説はなく、やや投げっぱなしの感。

 論文の引用が多いのは「学識豊かな法律家を目指す者は是非ともこのような言葉に慣れ親しんでおくべきである(194頁)」という著者の考えからでしょうか。上級科目の前の基礎として用意されている教科書ならもっと説明を一般化・簡略化し、計算に関してはNPVを比較してどっちが魅力的な投資かを計算する設例とかのほうが入ってきやすいようにも思いますが。

 もっともdisっているわけではなく、アカデミックミーハーな自分には古典的な有名論文を読めるのは嬉しく、個人的には楽しめました。企業観に関する学説史的な展開や効率的市場仮説についての詳しい説明などは改めて学べた部分も多かったです。

 しかし会計・ファイナンス・経済学・統計学まで揃っていると、あとはストラテジーマーケティング・組織論あたりを加えればまるでMBAのテキストですね。

 

*1:ファインナンスで論じられるような事柄が会社法証券取引法の基礎を成すことに関する指摘はありますが。