租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

〔書籍〕『本当の自由を手に入れるお金の大学』

マネーリテラシー第一歩に圧倒的オススメ

両@リベ大学長『本当の自由を手に入れるお金の大学』(朝日新聞出版2020)

 

 正直紹介していいものなのか若干迷いましたが、紹介します。

 本書『本当の自由を手に入れるお金の大学』はSNS等でお金に関する情報を発信している両学長さんが情報をまとめた一冊です。経済的な自由を手にするためのお金に関する実践的な考え方・方法が載っています。

 両学長を知ったキッカケは社会保険に関して検索をしているときにYoutubeを知ったことです。正直、Youtubeでお金のことを発信しているというと「胡散臭いなぁ」という印象を持ちました。なんか投資商品への勧誘でもしているのかな、と。

 しかし見てみるとむしろ浮ついた議論を離れた正論が多く、「そりゃそうだよな」と納得できる話が多かったため本も買ってみたという運びです。例えば投資に関しても高利率のうまい話はないとか、保険も社会保険でたいていのリスクはカバーされるのだから民間保険は最小限でいいとか。商品の勧誘をするどころかお金を守るための骨太なアドバイスが多数です。

 本の方を読んでみると、絵がふんだんでカラーで物凄く読みやすいのですが内容も濃く、また全体を通じた流れも論理的で頭に入りやすい、非常に秀逸な本であると思いました。

 ぶっちゃけ、顧問先の人に「お金のことを勉強したい」と言われたらこの一冊から始めてはどうですかとオススメできる本だと思います。

 

税理士も学ぶべきところ多々

 紹介していいか迷ったというのは、一応税理士という専門家として、顔も出していない非専門家の発信する情報を(こっそり参考にするならまだしも)表立って有り難がっていいものか?というちっぽけな抵抗感があったからです。

 しかしYoutubeを見て本を読むとそんなのは全く本質的でないと思わされましたし、むしろ、税理士はこんなに一生懸命わかりやすく情報を発信してきただろうかと反省するところの方が多かったです。

 税理士はせっかく顧問先の財布の状況を把握するような立場にいますから顧問先経営者の資産の形成などに関して言えることは色々あるはずです。しかしルーチンで記帳代行をして決算を締めているだけの税理士も世の中にはたくさんいるのではないでしょうか。

 それに対して「もっとお金に関してこういうことが考えられますよ」という、姿勢や表現方法などの部分で本書からは非常に学ぶべきところが多いと感じました。

 また本書の視点は法人の財務コンサルにも活きるものであると思いました。もちろん最終的に個人にキャッシュアウトしてなんぼの法人は個人と根本的に違いますし、給与所得者が努力で収入をあげづらいのとは反対に会社はまず稼ぐことを考えるべきです。しかし「お金を貯めるならまずは金額の大きい固定費を見直せ」のあたりは損益分岐点を下げる際の定石ですし、「稼ぐ」にあたり失敗してもいい事業を小さく始めると言った考え方はヒントになります。

 何より共感したのは節税に関する考え方で、支出があるときに控除を使うのがいいが控除のために支出を増やすのはナンセンスだという指摘です。このあたりもちゃんとしているなと。

 というわけで存外に税理士におすすめの一冊です。普段の法人顧問業務にプラスアルファというか、トークのネタとしても面白いものがたくさん載っていますので。