租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

インボイス制度開始に向けて考えるいくつかの実務ポイント

 インボイス制度の導入に向けて少しずつ勉強。以下は(会のマルチメディア研修で熊王先生の講義を聞いたのを中心に)勉強メモの落書き程度に。

 

(1)令和3年10月からインボイス発行事業者の登録申請受付開始。令和5年10月から制度開始。

 このタイムスケジュールをまず抑えておかないといけませんね。まだ先の話だからいいだろうと構えていると時間がなくなるので、この夏に全関与先一気に取り組むのがよさそう。

 令和3年10月を過ぎたらまた年末調整→確定申告でバタバタするし、そうすると令和4年の夏になる。それでも手遅れではないのでしょうが、そこスタートだと対応が後手に回りそうです。

 全関与先の有利判定などは今年の夏にいっせいに取り掛かって、そこから国税や専門誌から情報が五月雨式に出て来るのを受けて準備を進めていく形でしょうか。

 

(2)請求書の記載内容で増えるのは「税率ごとの税額合計」と「登録番号」だけ。請求書の情報はそれほど増えない。

 インボイスが始まるとやたら書類がややこしくなりそうなイメージもありますが、現状でも軽減税率があれば分けて書いているでしょうし、インボイス導入前後で請求書の様式がそれほど変わるわけではないようです。

 

(3)基本的に課税事業者は登録申請すればいいだけで、有利不利について考える必要はない。また、義務ではない。

 基本的に現状で課税の事業者はインボイス発行事業者になって損をすることはありません。ただしインボイス発行事業者に「ならないといけない」わけではなく、例えばBtoCで相手方が支払いを税額控除しない会社は「必要がない」とも言えます。

 とはいえ、まぁ、急に発行する必要が生じても嫌だから登録しておくのが現実的でしょう。

 また、免税事業者への支払いについて制度開始後にどうするのかを考えておいたほうがいいでしょう。例えばいまなんとなく消費税込みで上がってきている免税事業者(と思われるフリーランサーなど)からの請求に対して、制度開始後にこの消費税分について支払いを拒否する対応をとるのかどうなのか。

 仮にそうするのであれば事前に支払先にそういった対応をする旨書面で通知しておくなどするのがトラブル回避になるのではないかと思われます。

 

(4)免税事業者は課税事業者にならないとインボイス発行事業者になれないため、有利不利などを早めに考える必要がある。

 やはり問題はここで、いま免税の事業者は課税事業者にならないとインボイスの発行ができず、税込み金額を請求することもできなくなります。課税事業者になってまでインボイス発行を目指すのか、そうすると納税の負担はどのくらい出るのか、簡易課税などはどうするのか。税理士としてはこの辺をシミュレーションして情報提供してあげる必要がありそうです。

 また税制以前の現実的な対応としては主な得意先に事前にインボイス制度開始後の税抜き価格などの折衝をしておくのも重要かもしれません。

 

(5)インボイス制度開始後でも課税仕入れの適用にインボイスが「不要」な場合もある。

 例えば①中古車販売業者(古物商)の消費者からの仕入れ②宅建業者の消費者からの建物仕入れ③従業員への通勤手当、などは相手方がインボイス発行業者ではなくても一定の帳簿の保存で仕入税額控除可能です。

 この辺は制度開始にあたって「これからはとにかくインボイスがないと税額控除ができない!」とだけ考えていると「考えてみるとこういったケースでも控除できないのか?」と混乱してしまいそうなので、古物商や不動産業の顧問先には予め案内して事務処理の仕方を交通整理しておくとよさそうです。