租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

適格請求書と誤認されるおそれのある書面ってなんなんでしょうか

問題意識のメモとしてタイトル通りの疑問を書いているだけの記事です。

答えはありません。

 

令和5年10月開始のインボイス制度の下では、相手方が仕入税額控除可能な適格請求書を発行できるのは登録している課税事業者だけです。

逆に登録を受けていない事業者は適格請求書と誤認されるおそれのある書面を交付することが法律で禁じられ、罰則もあります(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金)。

それに関する案内のソースとして、例えば国税のリーフレットがあります。

 

率直な疑問としてはそこでいう「誤認されるおそれのある書面」てなんなのよ?ということです。

例えば、現状、免税事業者のフリーランスでも得意先に請求書を発行するときになんとなく価格がいくらで消費税が10%で合計いくら、というように消費税を乗っけた形での形式にしている方は多いだろうと思われます。

それは別に益税どうこうの意識すらなく、ネットで請求書のひな形などを検索するとそういう形になっているからくらいの経緯なことも多いでしょう。

そうしたときに、この何気ない請求書が、インボイス制度開始後に「税率と税額の合計額まで書いて、これは適格請求書と誤認されるおそれがあるな! 懲役刑だ!」という話になってしまうのでしょうか?

 

「いくら国税でもそこまで鬼ではないんじゃね?」とは思いたいところですが、ふたつ気になることがあります。

ひとつは仮装・偽装していなくても「誤認されるおそれ」があったらそれでアウトだという言い方なことです。

仮に「免税事業者だけどなんとか消費税分ちょろまかしたい」という悪意があり、登録番号もどきまで記載するなど積極的に適格請求書を偽装していたらそれはダメだろうというのは素朴な正義感からもわかります。

しかし規定はそうではなく「誤認されるおそれ」があったらダメということで、かなり処罰の対象を広めにとっている感があります。わざわざそのように定めるからには実際にある程度広く取り締まる意思があるのでしょう。

ふたつめは課される罰が刑事罰だということです。過料くらいですまないというところがシビアだなと。それくらい取り締まりへの本気度を感じるということです。

安全をとるなら「本書面は消費税法に規定する適格請求書ではありません」などと端っこに記載するなどが考えられますが、なんだかそれも滑稽な気もします。

 

なお、この点について国税インボイスコールセンターに電話をして聞いてみたところ、「消費税法では消費税の記載そのものは差し支えないが、誤認されるおそれがないようお願いしている」というわかるようなわからないような回答でした。

これについて何か具体的なところをご存じの方がおられましたらご教授いただけますと幸いです。