租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

2024-01-01から1年間の記事一覧

弥生会計とEPSON財務の消費税計算処理の違い

実務的なあるあるから。 (1)関与先の会計ソフトが弥生会計 (2)税理士事務所の消費税申告ソフトがEPSON(財務顧問) のときに、消費税(電子)申告のために弥生での取引データを財務顧問に入れる*1と消費税の計算の端数処理で納付税額が100円ズレること…

〔書籍〕『あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン』

住吉雅美『あぶない法哲学 常識に盾突く思考のレッスン』(講談社2020) 税の本ではないですが、面白かったので共有までに。 様々な法哲学の考え方を、ラディカルな目線の問いや身近な例を通じて知ることができる一冊です。記述がユーモアを交えて軽快ですし…

改正賃上げ促進税制・繰越控除の注意点

令和6年4月1日以後開始事業年度に適用の賃上げ促進税制、中小企業向け制度では5年間の繰越控除ができるようになった点が大きな変化です。 これまでは赤字になることが明らかである事業年度は賃金の集計すら必要がなかったものが、一応やっておかないと将来の…

運転免許取得費用の会社負担

従業員の運転免許取得費用を会社が負担した場合、免許自体は従業員に帰属し経済的な利益を享受することから給与課税が考え方の原則とは思いますが、課税実務上は必ずしもそうしなければいけないわけではありません。この辺根拠の認識が曖昧でしたが所基通36-…

粉飾解消と税理士の責任

先日公表された税理士・税理士法人に対する懲戒処分等、自己脱税や名義貸しについては当然という話ですが、気になったのが粉飾の解消への関与で処分を受けているのが3件ほどあったことです(Xで知りました)。 例えば以下のもの。 故意による不真正税務書類…

支払調書は発生主義なのか現金主義なのか

1.はじめに 2.法令から考える 3.国税庁の手引から考える 4.給与の年末調整から考える 5.確定申告での還付手続きから考える 6.前払家賃の質疑応答から考える 7.支払調書を作る趣旨から考える 8.作成上の便宜から考える 9.結論:「支払時期…

謝礼・お車代と源泉徴収

1.名目がお車代でも原則は源泉徴収が必要 2.再確認する事項 (1)支払先は本当に個人か (2)本当に源泉対象の報酬か (3)旅費交通費を直接払いすることでもてなし感を出せないか 3.せめてもできること (1)グロスアップしてキレイな金額で渡す …

事前確定届出給与は期限内であれば支給→届出でもいい

ちょっとした話で。 法人税法における事前確定届出給与の典型的な時系列は決議→届出→支給ですが、定時株主総会で決議してすぐに支給するような場合には届出の提出が支給の後になることがあり得ます。 (例) 5/25 株主総会で決議 5/26 役員に支給 5/27 税務…

M&Aの売り手が株の譲渡を退職金に振り替えるべき最適な金額

M&A売り手の税負担についての検討メモ。 株式の譲渡対価を退職金でもらうのが有利ではないかという論点に関して。 譲渡する株式の取得原価を割り込まない範囲において、譲渡対価への課税は定率の20.315%。 退職金に対する限界税率がこれを超えない限りなるべ…

知識の盲点と思い込みを避けるための調査方法

最近同業者のX(Twitter)を拝見していて「調べ物をするときは自分なりに仮説を持ってから調べる」という方が複数いて「へぇー」と新鮮な気持ちでした。 というのも、私が調べ物をするときはむしろ「先入観を持たずにまっさらな気持ちで関連情報を見る」心持ち…