租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

書籍

税務会計専門書読み放題『丸善リサーチ』のここがスゴイ

今更ですが。そしてタイトルはちょっと大袈裟気味に。 先月くらいに税務会計系の専門書(電子書籍)がサブスクで読み放題になる『丸善リサーチ』が話題になっていたので登録してみました。 個人向けのスタンダードプランは月額3,500円ですがまずは無料でお試…

月次決算を極めれば経営が良くなるか

本日のお題はAmazonでたまたま見つけたこちらの書籍。 田村和己『税理士・会計事務所職員のための業績改善の基礎知識』(中央経済社2022) ひと目、会計事務所の業績を改善するための本なのかと思って手に取ったのですがそうではありませんでした。「業績改…

〔書籍〕『税理士の実務に役立つホットな話題』

関根稔 & taxMLのメンバー『税理士の実務に役立つホットな話題』(財経詳報社2022) 知る人ぞ知る、関根先生を中心としたメーリングリストのログを書籍化したもの。その性格上、良い意味でも悪い意味でも「博識な同業者と最近のトピックについて雑談できる」…

公庫「飲食店経営力磨き上げガイド」など

税務ではないのですが。 ふと公庫のサイトを見たときに「飲食店経営力磨き上げガイド」なるものが最近刊行されていたのを知り、見てみたところベーシックなことがわかりやすくまとめられていていいなと思いました。PDFで無料閲覧可能です。 その他にも「写真…

〔書籍〕『倒産続きの彼女』

新川帆立『倒産続きの彼女』 前著の『元彼の遺言状』が読みやすかったのでこちらも読んでみました(Kindle版にて)。 ネタバレ要素ありの感想。 本作も全体的にライトで、ちょっとした謎解き感を楽しみながら退屈せずに最後まで読めました。テンポ良く進んで…

〔書籍〕『相続・事業承継業務をクリエイティブにする方法60』

白井一馬『顧問税理士のための相続・事業承継業務をクリエイティブにする方法60』(中央経済社2017) 「強い税理士になるための一歩踏み込んだ知識」のオンパレードといった感じの書籍。 それでいて中小企業の顧問をする税理士として無理をしない、お客様に…

〔書籍〕『元彼の遺言状』

新川帆立『元彼の遺言状』 あまりこのブログっぽくはないかもしれませんが。 最近相続法ともう少し仲良くなりたい気持ちがあって、こういう「法律要素のあるエンタメ」にも触れることでそれが達成できるのではと思い、ドラマ化することすら知らずに書店で手…

〔書籍〕『顧問税理士が教えてくれない相続・生前対策パーフェクトガイド』

岸田康雄『顧問税理士が教えてくれない相続・生前対策パーフェクトガイド』(中央経済社2018) 内容(「BOOK」データベースより)企業経営、不動産活用、金融資産運用、生命保険から民事信託まで、すべての分野に横断的な相続対策について、税負担を最小化さ…

〔書籍〕『起業のエクイティ・ファイナンス』

磯崎哲也『起業のエクイティ・ファイナンス』(ダイヤモンド社2014) 必読書の続編もまた必読書 前回記事の『起業のファイナンス』がだいぶ面白かったので勢いで続編を読みました。続編のこちらももはや8年前となりますが、現在も通用する学びが多く含まれて…

〔書籍〕『起業のファイナンス増補改訂版』

誰もが知っているスタートアップファイナンスに関する名著。学生時代に軽く目を通したことがありましたが、最近スタートアップに関わることが増えてきたため改めてじっくり読んでみました。 自分が実務に触れている状態で読んでみると、これは本当にいい本で…

〔書籍〕『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』

酒井克彦『裁判例からみる所得税法〔二訂版〕』(大蔵財務協会2021) 旧版の所有者ですが改訂版が出たということで早速ゲットしました。 本書はタイトルの通り裁判例を素材に所得税法を体系的に整理しています。 所得税法について知っておいたほうがいい裁判…

〔書籍〕『「戦略会計」入門』

高田直芳『「戦略会計」入門』(日本実業出版社2007) 少し前の本ですが、見かける度に少し気になっていたのでふと気が向いて買ってみました。 会計学と経済学との融合をテーマに掲げており、その部分に興味があったため楽しみに読みました。 本書の魅力とし…

〔書籍〕『一般社団法人・一般財団法人の税務・会計Q&A』

田中義幸『一般社団法人・一般財団法人の税務・会計Q&A~本当に知りたかったポイントがわかる 税理士からの相談事例100~ 』(第一法規2019) 税理士の実務に馴染む一冊 久しぶりに一般社団法人を担当するので知識の整理のために買いました。 惹かれた…

〔書籍〕『争えば税務はもっとフェアになる』

北村豊『争えば税務はもっとフェアになる』(中央経済社2020) 納税者勝利の裁決事例をドラマ仕立てで紹介 本書は国税不服審判所の裁決事例をテーマとしており、最近の裁決事例で納税者側が勝利したものを14本紹介しています。あまり専門用語は使っておらず…

〔書籍〕『租税史回廊』

中里先生のエッセンス詰め合わせ 中里実『租税史回廊』(税務経理協会2019) 税経通信の同名連載を書籍化したもの。書名から重厚・無機質な歴史の記述が続くのかと思っていましたがそうではなく、むしろ歴史に関する記述は4分の1程度で終わります。残りのほ…

〔書籍〕『小説で読む租税法―租税法の基本を学ぶロースクールの授業』

小説で読むシリーズ待望の租税法編 木山泰嗣『小説で読む租税法―租税法の基本を学ぶロースクールの授業』(法学書院2020) 木山先生の著作は全体的に難しいことをわかりやすく解説した良書ばかりですが、その中でも「小説で読む」シリーズは特に思い入れがあ…

〔書籍〕『本当の自由を手に入れるお金の大学』

マネーリテラシー第一歩に圧倒的オススメ 両@リベ大学長『本当の自由を手に入れるお金の大学』(朝日新聞出版2020) 正直紹介していいものなのか若干迷いましたが、紹介します。 本書『本当の自由を手に入れるお金の大学』はSNS等でお金に関する情報を発信し…

『数理法務概論』を読む(6)ミクロ経済学

『数理法務概論』、第6章はミクロ経済学。 第6章 ミクロ経済学 1 概説 2 競争市場の理論 3 消費者が有する情報の不完全性 4 独占とこれに関連する市場行動 5 外部性 6 公共財 7 厚生経済学 8 読書案内 80頁のほどの分量を割いてミクロ経済学の概要…

『数理法務概論』を読む(5)ファイナンス

『数理法務概論』、第5章はファイナンス。 第5章 ファイナンス 1 概説 2 ファイナンス理論の基礎 3 貨幣の時間的価値 4 コーポレート・ファイナンスの重要概念 5 資産の価格決定 6 読書案内 良い悪いは別にして、どうしてこういう書き方になったのか…

租税法入門書のおすすめ

1.よくわかる税法入門 独習で租税法に入門するのにおすすめの本は何かと聞かれたのでせっかくだからブログにも書きます。色々読んできましたし「こういう場合にはこう、こういう人にはこう」と書きたいところですがそういう情報はかえってわかりづらいので…

『数理法務概論』を読む(4)会計

『数理法務概論』、第4章は会計。 第4章 会計 1 概説 2 三つの基本書類 3 複式簿記と財務諸表 4 会計の諸原則 5 会計の法制度 6 財務諸表分析 7 読書案内 本章では制度会計と財務諸表分析について概観しています。 会計についての知識そのものに新…

『数理法務概論』を読む(3)契約

『数理法務概論』、久しぶりになってしまいましたがしぶとく続けます。第3章は契約。 第3章 契約 1 概説 2 なぜ契約が締結されるのか 3 契約書作成の基本原則と留意点 4 製造物供給契約 5 代理契約 6 その他の契約類型 7 契約紛争の解決方法 8 契…

「社会保険料と年金制度」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第7章第1節「社会保険料と年金制度」。 本節は本書の中で最も古く書かれた論文(1997年)であり、正直本書の他の部分との関りは薄いです。 妥当な年金制度が主に経済的な観点から議論され、その議…

「議会の財政権」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第5章第2節「議会の財政権」。元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。 前節の「租税法律主義は議会の財政権に基づく」という指摘を敷衍し、歴史的な視点と外国の学説を通じて「…

「議会の財政・金融権限と名誉革命」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第5章第1節「議会の財政・金融権限と名誉革命」。 財政と合わせて金融の議会的統制を考えることの重要性を説いた節です。 特に財政軍事国家という中世ヨーロッパの観念をもとに金融制度がイングラ…

「主権国家の成立と課税権の変容」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第2章第1節「主権国家の成立と課税権の変容」。 驚異の外国文献炸裂セクション。本節の初出は2014年の『租税法と市場』ですが、買ってきて「よーし頑張って読むぞー」と思った気持ちが序盤の本論文…

「憲法が前提とする憲法以前の法概念・法制度」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第3章第2節「憲法が前提とする憲法以前の法概念・法制度」。 憲法学でいわゆる制度的保障として議論されるような事柄を租税法学の「借用概念」の議論を援用することで少し異なる見方で整理する面白…

「財政法の2つの側面」「財政の再定義」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第1章「財政法の2つの側面」と「財政の再定義―財政法の実体法化と経済学」。後者の元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。 この第1章では議会の財政権と国家の財産権を論じるの…

「金銭債権と租税」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第7章第2節「金銭債権と租税」。 他の箇所でも度々述べられているように租税債権は本質的には(民法の)金銭債権であること、制定法の解釈には普通法がベースにあることが確認されます。 そうした…

「財政制度と法の関わり」『財政と金融の法的構成』

中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第4章第1節「財政制度と法の関わり」。 本節では財政の法的な検討として手続き的・行政法的な検討だけでは不十分で、実体法的・私法的な把握が大事だということで「国家活動の概念図」(165頁)な…