租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

制作業務に係る人件費の仕掛品計上(をしないことについて)

設計やIT系の制作業務などで、制作期間中に決算日が訪れるような場合でも、中小企業の税務会計実務では人件費は単に期間費用(損金)として処理され、翌期の売上に対応する部分を仕掛品計上するという処理は取られていないケースが大半だろうと思います。

自分はこれは実務上の手間を踏まえた現実的な対応と捉えていたのですが、通達があることを今更知りました。

 

(技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額)

2-2-9 設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供に係る報酬に対応する原価の額は、当該報酬の額を益金の額に算入する事業年度の損金の額に算入するのであるが、法人が継続してこれらの技術役務の提供のために要する費用のうち次に掲げるものの額をその支出の日の属する事業年度の損金の額に算入している場合には、これを認める。(昭55年直法2-8「七」により追加、平30年課法2-8「三」により改正)

(1) 固定費(作業量の増減にかかわらず変化しない費用をいう。)の性質を有する費用

(2) 変動費(作業量に応じて増減する費用をいう。)の性質を有する費用のうち一般管理費に類するものでその額が多額でないもの及び相手方から収受する仕度金、着手金等(2-1-40の2本文の適用があるものに限る。)に係るもの

 

通達では特段人件費ということは言っておらず、固定費と、販管費変動費で多額でないもの、といった規定ぶりです。

雇用している従業員の人件費は固定費(の性質を有する費用)なので含まれていると考えていいでしょう。

あとはこの通達の対象である「設計、作業の指揮監督、技術指導その他の技術役務の提供」がどの範囲を含むのかという問題かと思います。

「法律家たれ」精神からいくとこの通達で法的に合ってるのか?というのは疑うべきところかとは思いますが、事実上原価の把握が難しい局面は多いため、税務調査の場で使える処理根拠*1があるのは有り難いかなと思います。

 

*1:納税者は通達に拘束されませんが、税務署は拘束されます。念の為。