租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

消費税法

返金をしない前受金の税務

1.事例 2.法人税 3.消費税 4.株価評価 1.事例 例えば年会費前払い制のスポーツクラブが、2年分の会費を先に払ってもらい、会員が途中退会しても返金しないというような場合があります。 この場合スポーツクラブの経理としては入金時点で全額を益金…

消費税の届出を出そうとしている期日が休日のとき

マルチメディア研修で聞いた誤りやすい事例として 課税事業者選択届出書や簡易課税選択届出書を次の期から適用しようとする場合において、その期間の末日が日曜日等にあたることから提出期限がそれらの日の翌日まで延長されると考えている。 という趣旨のも…

土地建物の一括譲渡と消費税

今日の税務通信(3717号)の〔裁判例・裁決例〕より興味深い裁判例(東京地裁令和元年(行ウ)第480号、令和4年6月7日判決)。 土地建物の一括譲渡(合計約10億)で契約書において土地・建物それぞれの対価が記載されていない場合について。 納税者:鑑定評…

「たま土地」の承認申請をやってみた

1.たま土地特例の趣旨 昔から持っている土地をたまたま今年譲渡したことにより、消費税の計算上、土地代金の非課税売上で課税売上割合がガクっと下がってしまうことがあります。 単発の土地譲渡以外は営業の実態に変わりがないのに低い課税売上割合で税額…

外国法人とのウェブ会議を通じたコンサル報酬と消費税

『東京税理士界』Vol.156の会員相談室。 内国法人A社(コンサル業) → 外国法人B社 ウェブ会議でQ&A形式アドバイスの報酬を得た場合輸出免税になるのか、否か。 回答としては電気通信利用役務の提供になるから、役務の提供を受ける事業者の本店所在地で内外…

続・適格請求書と誤認されるおそれのある書面

前回の記事で、インボイス制度開始後は免税事業者(未登録事業者)が「適格請求書と誤認されるおそれのある書面」を出すと刑罰があることについて書きました。 taxlawlabyrinth.hatenablog.com じゃあそれってなんなのよという話が今日税務通信*1に出ていま…

適格請求書と誤認されるおそれのある書面ってなんなんでしょうか

問題意識のメモとしてタイトル通りの疑問を書いているだけの記事です。 答えはありません。 令和5年10月開始のインボイス制度の下では、相手方が仕入税額控除可能な適格請求書を発行できるのは登録している課税事業者だけです。 逆に登録を受けていない事業…

口座振替の支払いとインボイス制度

インボイス制度というとその語感もあり、支払いの都度税額を請求書・領収書で裏付けられないといけないというイメージも強いです。 しかし例えば「事務所の家賃を口座振替で毎月自動的に支払っていて、その都度請求書や領収書が出るわけではない」といった種…

簡易から本則に切り替わるときの節税の注意点

1.仕入の前倒し もうすぐ決算期末の会社が思ったより大きく利益が出ているとします。そうすると「期末になんか経費使おうかな」と考えだすのは人情です(合理性は別として)。 その際、当期は消費税の簡易課税、翌期は原則課税のときに注意すべき点を素朴…

事業年度変更で短い課税期間の消費税中間納付に関する条文操作

例えば3月決算法人が事業年度変更で8月決算法人に変わった場合、その期に中間納税の納付書がやってきたときにどのように対応したらいいのかと戸惑うことがあります。 X1期 X1年4月1日~X2年3月31日(年税額48万円超400万円以下) X2期 X2年4月1日~X2年8月31…

インボイス制度開始に向けて考えるいくつかの実務ポイント

インボイス制度の導入に向けて少しずつ勉強。以下は(会のマルチメディア研修で熊王先生の講義を聞いたのを中心に)勉強メモの落書き程度に。 (1)令和3年10月からインボイス発行事業者の登録申請受付開始。令和5年10月から制度開始。 このタイムスケジュ…

くれぐれも特定新規設立法人にご用心

消費税の「特定新規設立法人」の規定、みなさんもう慣れましたか? ものすごくざっくり言うと「新しい法人を設立したとき、支配株主や関係者に課税売上5億円超のものがあると新設法人も1期目から課税事業者になる」というものです。 わかりやすい例では課税…

現物給与として支給する物品の購入は課税仕入れになる

給与の支給が支払者にとって課税仕入れにならないことは言うまでもありません。 これに伴って(?)、例えば交際費や福利厚生費が税務調査において給与認定されると、(源泉徴収義務が発生し役員給与であれば損金不算入の加算調整が必要になるのと同時に)消…

法人から個人への名義変更プランの課税関係についてのメモ(後編)

※2021年9月追記 本記事で議論している名義変更プランについては通達で手当てがされ、(率直な言い方をすれば)脱法的な個人への利益移転としては使えなくなりました。 具体的には、解約返戻金が資産計上額の7割未満となる保険の価額は資産計上額で評価するこ…

高額特定資産の取得に関する規定のおさらい

簡易課税の選択の検討をしていて、初めて高額特定資産の規定にひっかかることに気が付きました。 高額特定資産を取得した場合の規定というのは消費税法の平成28年改正における目玉と言われたものです。 このあたりの消費税の部分的な租税回避規定は体系性が…

簡易課税の場合における棚卸調整非適用の条文操作

消費税において免税事業者から課税事業者に切り替わったとき、免税事業者である期間中に仕入れた期首棚卸資産があると、これに係る消費税額は仕入れに係る消費税額に足し込むことになります。 消費税法の試験では重要度が高くない論点だったように記憶してい…