租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

口座振替の支払いとインボイス制度

インボイス制度というとその語感もあり、支払いの都度税額を請求書・領収書で裏付けられないといけないというイメージも強いです。

しかし例えば「事務所の家賃を口座振替で毎月自動的に支払っていて、その都度請求書や領収書が出るわけではない」といった種類の支払いも多いです。こういうときはどうすればいいのでしょうか。

 

これに対する国税の応答はQ&Aの問76です(リンク先PDFなので注意)。

(1)適格請求書は一定期間の取引をまとめて交付することもできる

(2)ひとつの書類だけで全ての記載事項を満たさないといけないわけではない

という前提があり、例えば「契約書+通帳」でもいいとされています。要するに記載事項の情報が集まればいいわけですね。

ご質問の場合には、適格請求書の記載事項の一部(例えば、課税資産の譲渡等の年月日以外の事項)が記載された契約書とともに通帳(課税資産の譲渡等の年月日の事実を示すもの)を併せて保存することにより、仕入税額控除の要件を満たすこととなります。 

「契約書+通帳」は「インボイス」「適格請求書」といった語感からすると一見しっくりこないですが、ケースとしてはこういう定期的な支払いは多いため、どうやって「適格請求書」として確認するかは社内的には支払いごとに整理しておく必要があるでしょう。

 

以上は普通の話として。

キツイなと思ったのはその後の補足として「ちなみに都度請求書が出ない取引だと、知らない間に相手が適格請求書発行事業者じゃなくなってる場合があるから気を付けてね、適宜公表サイトで確認してね」と書かれていることです。

不動産所得者(大家さん)としては、たまたま課税売上が1千万超えているからインボイス発行事業者として登録したものの、他の(課税の)物件を売却したがために課税売上が減って免税事業者になる、なんていうことは普通にあり得ます。そして、それをわざわざ借主みんなにすぐ通知するかというとあまり想像しにくいところです。

じゃあ毎月毎月インボイス事業者の公表サイトを確認するかというとそれもまた手間です(しかしそうしないと仮払消費税の計上は正しくならない可能性があります)。

中小企業の実務としては、その都度請求書が出ない取引に関しては「要確認の一覧を作成しておいて消費税の申告をする決算時にまとめて確認をする」というのが現実的でしょうか。そしてこれは実際のところ税理士に求められる対応となりそうです。