租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

2022-01-01から1年間の記事一覧

国外居住親族の扶養控除等

国税庁がPDFでQ&Aを公表しましたね。 令和5年1月からの国外居住親族に係る扶養控除等Q&A(源泉所得税関係) Q&Aによれば、国外居住親族について「扶養控除」の対象となるのは扶養親族のうち次の(1)から(3)にあたる者に限られ、適用を受けようとする場合…

土地建物の一括譲渡と消費税

今日の税務通信(3717号)の〔裁判例・裁決例〕より興味深い裁判例(東京地裁令和元年(行ウ)第480号、令和4年6月7日判決)。 土地建物の一括譲渡(合計約10億)で契約書において土地・建物それぞれの対価が記載されていない場合について。 納税者:鑑定評…

「たま土地」の承認申請をやってみた

1.たま土地特例の趣旨 昔から持っている土地をたまたま今年譲渡したことにより、消費税の計算上、土地代金の非課税売上で課税売上割合がガクっと下がってしまうことがあります。 単発の土地譲渡以外は営業の実態に変わりがないのに低い課税売上割合で税額…

無償増資の処理まとめ

無償増資、過去に一度しか経験がなく知識が少しぼんやりしていたので税理士会の研修でおさらいしてみました。 「許認可や取引先との都合で、資本金を増やしたい」 「しかし払い込むお金はない」 「じゃあ、繰越利益剰余金を資本金に振り替えちまおう」 こう…

チェックリストで業務を確実に!

税理士業務はミスをする恐怖との戦いだと思います。 自分が知識・注意力の面でマッチョになれれば一番ですが、そうは言っても人間なので見落としの危険は常にあるもの。 そこで活用したいのがチェックリストです。 本記事では法人の決算・申告を念頭に、実務…

公庫「飲食店経営力磨き上げガイド」など

税務ではないのですが。 ふと公庫のサイトを見たときに「飲食店経営力磨き上げガイド」なるものが最近刊行されていたのを知り、見てみたところベーシックなことがわかりやすくまとめられていていいなと思いました。PDFで無料閲覧可能です。 その他にも「写真…

誤解していた資本的支出の考え方

税務通信の記事*1を読み、ハっとさせられました。 法人税法施行令第132条(資本的支出)により資産の修理改良等の支出はその資産の使用可能期間を延長させるか価値を増加させる場合には資本的支出となり、一時の損金になりません。これ自体は問題ありません…

〔書籍〕『倒産続きの彼女』

新川帆立『倒産続きの彼女』 前著の『元彼の遺言状』が読みやすかったのでこちらも読んでみました(Kindle版にて)。 ネタバレ要素ありの感想。 本作も全体的にライトで、ちょっとした謎解き感を楽しみながら退屈せずに最後まで読めました。テンポ良く進んで…

外国法人とのウェブ会議を通じたコンサル報酬と消費税

『東京税理士界』Vol.156の会員相談室。 内国法人A社(コンサル業) → 外国法人B社 ウェブ会議でQ&A形式アドバイスの報酬を得た場合輸出免税になるのか、否か。 回答としては電気通信利用役務の提供になるから、役務の提供を受ける事業者の本店所在地で内外…

税理士がビジネス実務法務検定2級(IBT)受けてみた

ビジ法3級から2級へ 今月頭に東京商工会議所が主催するビジネス実務法務検定試験2級を受験(合格)しましたのでつらつらと感想を書いてみます。 なお3級は昨年受けておりまして、3級の感想やIBTの試験方式に関する細かい情報などは前回の記事で。 taxlawlaby…

退職した役員の給与を日割り支給してはいけないのか

「雇用契約である従業員と違って役員は委任関係だから、給与の締日とか日割り支給という概念がない。だから任期の中途、月の中途半端な日に退職したのであっても日割り計算で役員報酬を支給することはできない」 と実務上言われています。 「実務上言われて…

役員給与条文の読み方

法人税法34条1項の法律効果 法人税法における役員給与の規定について「定期同額給与(34条1項)に該当すれば、不相当に高額(34条2項)の規制対象から外れる」とする論文を目にしました。 それは違うと思うし中小企業実務にとっても大事なところなので、条文…

相続人が不存在の場合の準確定申告

確定申告をしていた納税者が年の中途で亡くなった場合、相続人が共同して4ヶ月以内に準確定申告をするのが通常の実務です。 では、相続人(になり得る親族)が全員相続放棄をしてしまったら準確定申告はどうなるのでしょうか。 結論として、このような場合、…

合同会社の持分の相続税評価

以前も書きましたし、ちょくちょく聞く話なのですが、日頃お客様と会話するときにも忘れないように話題に出る度に触れていこうかと。 直近の「東京税理士界」の論壇「持分会社をめぐる考察」(リンク先PDF)で持分会社の出資の評価について触れられています…

6月までに死亡した納税者に予定納税義務はない

納税者が上半期に死亡した場合の予定納税 税務署は6月15日までに、予定納税の通知を送ってきます(所得税法106条)。 しかし例えば5月にその納税者が亡くなっている場合はどうなるのでしょうか。結論としてはこの場合、予定納税の納付義務はない、すなわち納…

〔書籍〕『相続・事業承継業務をクリエイティブにする方法60』

白井一馬『顧問税理士のための相続・事業承継業務をクリエイティブにする方法60』(中央経済社2017) 「強い税理士になるための一歩踏み込んだ知識」のオンパレードといった感じの書籍。 それでいて中小企業の顧問をする税理士として無理をしない、お客様に…

〔書籍〕『元彼の遺言状』

新川帆立『元彼の遺言状』 あまりこのブログっぽくはないかもしれませんが。 最近相続法ともう少し仲良くなりたい気持ちがあって、こういう「法律要素のあるエンタメ」にも触れることでそれが達成できるのではと思い、ドラマ化することすら知らずに書店で手…

〔書籍〕『顧問税理士が教えてくれない相続・生前対策パーフェクトガイド』

岸田康雄『顧問税理士が教えてくれない相続・生前対策パーフェクトガイド』(中央経済社2018) 内容(「BOOK」データベースより)企業経営、不動産活用、金融資産運用、生命保険から民事信託まで、すべての分野に横断的な相続対策について、税負担を最小化さ…

〔書籍〕『起業のエクイティ・ファイナンス』

磯崎哲也『起業のエクイティ・ファイナンス』(ダイヤモンド社2014) 必読書の続編もまた必読書 前回記事の『起業のファイナンス』がだいぶ面白かったので勢いで続編を読みました。続編のこちらももはや8年前となりますが、現在も通用する学びが多く含まれて…

〔書籍〕『起業のファイナンス増補改訂版』

誰もが知っているスタートアップファイナンスに関する名著。学生時代に軽く目を通したことがありましたが、最近スタートアップに関わることが増えてきたため改めてじっくり読んでみました。 自分が実務に触れている状態で読んでみると、これは本当にいい本で…

「解約返戻金のピークで保険を解約する」考え

先日お客様と打ち合わせをしていて「2年後に返戻率のピークが来る保険があるんだよねー。そこで解約して、それでどうしようか」といった話が出ました。そこで感じた素朴なことを書いてみたいと思います。 「みんなわかったうえでだよ」と突っ込まれそうな非…