租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

土地建物の一括譲渡と消費税

今日の税務通信(3717号)の〔裁判例・裁決例〕より興味深い裁判例東京地裁令和元年(行ウ)第480号、令和4年6月7日判決)。

 

土地建物の一括譲渡(合計約10億)で契約書において土地・建物それぞれの対価が記載されていない場合について。

 

納税者:鑑定評価で按分し土地8億・建物2憶

国:固定資産税評価で按分し土地5.5億・建物4.5億

 

として争い、裁判所は「一般論としては固定資産税評価額による按分はアリだけど、適正な鑑定評価が出るならそっちだよね」という趣旨の判決を下し、国も控訴せずに確定とのことです。

※もちろん金額や判決要旨はざっくりで引用しております。

 

法解釈論としては消費税法施行令45条3項の問題となるわけですが、いずれにせよ鑑定評価使うか否かでおよそ2,200万も預かり消費税が変わるのは専門家責任の観点から素朴に恐ろしいなと思いました。

実務上は固定資産税評価額は入手が容易ですし行政が算出しているものということでエクスキューズを立てやすいですが、安直に頼ってはいけないと。

もちろん本件は一事例にすぎませんし、個別の事情として地価の変動が激しかったため3年ごとの見直しに留まる固定資産税評価が実態を正しく反映しているかといった議論があるケースのようですのでいつでも鑑定評価が優位かといえばそれは違うと思うのですが、金額の大きな一括譲渡については鑑定評価をかますか少なくともその辺の説明・検討はしておかないとマズいなと思わされました。

ちなみに本件、取得側が固定資産税評価額で按分してて今頃震えてるといったことはないか……というのは邪悪な心配でしょうか。

 

消費税法施行令第45条

(課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れに係る消費税の課税標準の額)
第四十五条 法第二十八条第一項及び第二項に規定する金銭以外の物又は権利その他経済的な利益の額は、当該物若しくは権利を取得し、又は当該利益を享受する時における価額とする。
(第2項省略)
3 事業者が課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。以下この項において同じ。)に係る資産(以下この項において「課税資産」という。)と課税資産の譲渡等以外の資産の譲渡等に係る資産(以下この項において「非課税資産」という。)とを同一の者に対して同時に譲渡した場合において、これらの資産の譲渡の対価の額(法第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。以下この項において同じ。)が課税資産の譲渡の対価の額と非課税資産の譲渡の対価の額とに合理的に区分されていないときは、当該課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、これらの資産の譲渡の対価の額に、これらの資産の譲渡の時における当該課税資産の価額と当該非課税資産の価額との合計額のうちに当該課税資産の価額の占める割合を乗じて計算した金額とする。