租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

合同会社の税務周りの話(1)

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合同会社の税務周りの話(2)

合同会社の税務周りの話(3)

合同会社の税務周りの話(4)

合同会社の税務周りの話(5)

 

 最近関与先で合同会社がちらほら増えてきました。主に、個人事業主の法人成りというか、スモールビジネスでの利用が多いです。統計的に見ても今では法人の新規設立の4件に1件が合同会社になっているとか。

 調べる必要が生じる都度断片的に情報を仕入れて作業をしておりましたが、ここらへんで体系的に情報を整理しておかないとまずいと思い書籍を買ったり税理士会の研修を受けたりして情報を仕入れてみました。

 色々と面白い点があると思ったので自分用のメモとして、中小の税理士事務所目線でポイントと思われるところをまとめてみたいと思います。

 なお参考にした書籍は下記です。

 

太田達也『〔改訂版〕合同会社の法務・税務と活用事例』(税務研究会出版局2019)

 

 太田達也先生らしい、実務的に必要十分な情報を簡潔にまとめた一冊です。法務・会計・税務・活用事例それぞれの観点から整理して書かれていて、根拠条文や参考文献の引用も十分になされています。Amazonで検索した感じ、会計士や税理士によるまとまった本でめぼしいものは他にほとんどなさそうでした。

 

合同会社って簡単に言うと何?

 株主がお金を出して取締役に経営を委任して……というように所有と経営が分離することを前提とした株式会社とは異なり、原則として出資者=業務執行者となり、内部の運営に関してはみんなで話し合って決めることを前提とした組織形態です。原則的に議決権は頭割りで一人ひとつです。

 

合同会社のポイント① 設立・維持費用が安い

 具体的には、株式会社では最低でも定款認証の手数料が5万円、登記時の登録免許税が15万円と合計20万円の設立費用がかかります。これに対して合同会社では定款の認証が不要で、登録免許税も(資本金の金額次第ですが)最低で6万円であり、ミニマム6万円で設立できます。いきなり14万円得をすると言われたら個人事業主の規模感には嬉しいですよね。

 また役員の任期が法で定められておらず(株式会社は最長10年の定めあり)、改選の登記費用もかかりません。さらに決算公告の義務もないことから、そうした手数料も節約できます。

 これらの点に関しては費用の節約もさることながら「面倒な手続きがない」ことに魅力を感じる方も多いでしょう。実態は個人事業主だけど都合上法人格が必要、くらいの意味で法人を立ち上げるのであれば無駄な手間に感じる部分です。このあたりが合同会社の設立が増えている理由でもあるのでしょう。

 

合同会社のポイント② 税務は基本的に株式会社と同じ

 組合的な運営を前提としているとはいえ合同会社は法人であり、普通に法人税の課税対象となります。民法上の組合員のように構成員へのいわゆるパススルー課税が適用されるわけではありません。

 会計に関しても基本的には株式会社と同じように一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行に従うのみであり、税理士事務所としてはほぼ同じ感覚で処理できると考えていいでしょう。

 ただし当然ながら「株主資本」はなく「社員資本」となります。無いとは思いますがうっかり株式会社のテンプレで決算書を出してしまうと恥ずかしいのでこの点はよくよく注意。株主資本等変動計算書を作ってはいけません。社員資本等変動計算書を作りましょう。

 

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