租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

「解約返戻金のピークで保険を解約する」考え

先日お客様と打ち合わせをしていて「2年後に返戻率のピークが来る保険があるんだよねー。そこで解約して、それでどうしようか」といった話が出ました。そこで感じた素朴なことを書いてみたいと思います。

 

「みんなわかったうえでだよ」と突っ込まれそうな非常に素朴なことで、要は解約返戻金額や解約返戻率が一番高いところで解約するのが得というわけではないという話です。

 

例えば、毎年1,000千円の保険料を支払っていて、単純返戻率が次のようになっているとします。X3期の返戻率が最も高く、その後はだんだん下がっていくというスケジュールです。

 

X1期 82% 累計支払額 5,000千円

X2期 83% 累計支払額 6,000千円

X3期 84% 累計支払額 7,000千円

X4期 83% 累計支払額 8,000千円

 

このときに「返戻率が一番高いところで解約するのが得である」と考える人がいるようです。

が、例えば返戻率が82%ということは、支払った額のうち18%は戻ってこないということです(負担をするのは保障を受けているのだから当然です)。そしてパーセンテージは上がったとしても累計の支払額は増え続けていきます。

累計支払額から解約返戻金を引いた「保険会社に支払ったまま戻ってこないお金(実質的な負担)」の情報を付け足すと下記になります。

 

X1期 82% 累計支払額 5,000千円 差引支払額900千円

X2期 83% 累計支払額 6,000千円 差引支払額1,020千円

X3期 84% 累計支払額 7,000千円 差引支払額1,120千円

X4期 83% 累計支払額 8,000千円 差引支払額1,360千円

 

結局、返戻率が上がっている間も保険のために消費する会社財産はどんどん増えていくわけです。もちろん返戻率の設定次第なので必ずそうなるとは言いませんが、保障サービスへの対価を負担することからすれば普通はそうなります。

これは返戻「率」のピークではなく返戻「金額」のピークで考えても同じ問題が起きます。

 

結局、「もう保障は必要ないかなと思っている保険がある」のであれば、負担の累計額が増える前に解約してはという(繰り返し素朴な)お話でした。

多少資金繰りやタックスプランニングを加味するというところはあるかと思いますが、期末に無理やり経費を使う”節税”と同じで、不要なものは払わないに尽きる、保険には保障が必要な分だけ入ればいい、ということかと思います。