租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

チェックリストで業務を確実に!

税理士業務はミスをする恐怖との戦いだと思います。

自分が知識・注意力の面でマッチョになれれば一番ですが、そうは言っても人間なので見落としの危険は常にあるもの。

そこで活用したいのがチェックリストです。

本記事では法人の決算・申告を念頭に、実務に有用なチェックリストを集めてみました。

 

 

日本税理士会連合会 中小会計指針・中小会計要領チェックリスト

https://www.nichizeiren.or.jp/taxaccount/sme_support/guide/

 

中小企業が準拠すべき会計処理の基準についてのチェックリスト。

このうち「指針」は退職給付会計や税効果会計を念頭においた高品質なもの、「要領」は必要最低限のものです。

町税理士としては財務諸表論で勉強したような高品質な会計基準は実際には使う機会が少なく、かといって税額だけ合えばいいというものでもないし、どの程度会計をきっちりやるべきかと線引きに悩むことがあります。

この点自分としては最低限「要領」に、そして可能な範囲で「指針」に準拠していますと言えるように意識しています(税務プロパーの立場から見たとしても一定の公正な会計処理への準拠は法人税法22条4項により要請されています)。

業務のチェックリストとしてガシガシ使うというよりは、申告書作成の前提として最低限これに自信を持ってチェックが入れられるよう決算書を作成することが必要でしょう。

金融機関対応や補助金申請などで顧問先から作成を依頼されることもあるので、言われなくても要件を満たし決算毎に作っておくつもりで。

 

 

日本税理士会連合会(会員限定) 業務チェックリスト〔法人税

https://www.nichizeiren.or.jp/wp-content/uploads/member/doc/gyoumuchecklist_houjinzei.pdf

 

会員限定になってしまうのと、作成(最終更新)が平成29年と少し古いのが残念ですが、勘定科目ごとの注意論点がポイントをおさえつつ多角的に記載されていて中小企業の決算では非常に使いやすく実践的なチェックリストではないかと思います。自分はこれをアレンジしたようなチェックリストを自作して使っています。

決算準備→BS→PL→申告調整関係、というチェックの流れも実務に沿っていてスムーズですし、チェック項目も要点が絞ってあって集中力が削がれずに最後までチェックすることができます。

ちゃんと登記情報を確認したかや今後の経営状況を聞いたかというような税理士業務にとって重要なところも書いてくれています。

ただし、別表記載に関するチェック項目はありません。

なお法人税以外の税目も提供されています。

 

 

日税連保険サービス 自己診断チェックリスト

https://www.zeirishi-hoken.co.jp/info/211018.html

 

税賠保険を提供する日税連保険サービスが公開しているチェックリスト。公益財団法人日本税務研究センターが監修しています。

法人税・消費税・相続税・譲渡所得税……と税目が揃っており、「税賠を防ぐ」という税理士にとって実用的な観点で作成されているのがありがたいところ。

決算自体についてはあまり触れられていませんが、特に消費税についてはちょっとした計算方法のうっかりがないよう確認項目が手厚い上、課税関係の検討についての細かい様式が記載されているため有用です。

特に納税義務判定のフローチャートは使いやすく、自分は非典型的な納税義務判定では必ずこのフローチャートを使うようにしています。

 

 

国税庁 申告書確認表

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/hojin/sanko/tk.htm

 

国税が、調査課所管法人が申告書を提出する前に申告書の自主点検や税務上の観点からの自主監査を行うことを念頭として提供している確認表です。

ひたすらに別表の形式的な確認という内容で、「①と②の合計が③になっているか」みたいな部分は正直ソフトがたいてい正しくやってくれますし、税理士が中小企業の申告業務をするのにはあまり出番がないかなと思っていました。

しかし令和2年4月1日以後開始事業年度等分から別表の様式にコメントを書き込んだ図解形式での提供が始まり、これはなかなか見やすいです。

例えば自己株式がある場合にちゃんと別表二に内書きしているかなど、ボーっとしているとちょっと見落としやすいような論点について注意を促してくれます。『法人税 決算と申告の実務』みたいに使えます。

なお、資産税において国税のチェックシート利用は半ば常識かと思いますが、一応リンク張っておきます。

https://www.nta.go.jp/about/organization/tokyo/topics/check/r03/01.htm

 

 

法人会 自主点検チェックシート

http://tax-compliance.brain-server2.net/compliance/units/

 

企業の税務コンプライアンス向上のためのチェックリストです。

決算作業というよりは純粋に内部統制・経理業務の適正化のための内容ですが(文書の管理がきちんとしているかなど)、税理士としては日頃の経理指導のひとつの標準として利用できますし、会計処理に関する内容も多いため普段の関与でこれらの内容を確認しておけば早期・正確な決算の実現に有効なものと思います。

 

 

最後に、これらのチェックリストの利用は、実体的にミスを防ぐというのもそうですが、日税連や国税庁といった権威ある組織が作成している基準への準拠を確認することにより、対外的な説明責任への対処や業務への自信に繋がるのではないかとも思うところです。

例えばお客様から「どうしてここの記載はこうなっているか」「経理の仕方はこれでいいのか」と聞かれたときに、「なんとなく自分の経験上」ではなく「国税の記載方針に従っている」「会計要領ではここまで求めらえているがクリアしている」と言えるからです。

それでダメならしょうがないということで検討の沼にハマりすぎないという効果も期待できますし、副次的な効果は色々あるものと思います。