租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

無償増資の処理まとめ

無償増資、過去に一度しか経験がなく知識が少しぼんやりしていたので税理士会の研修でおさらいしてみました。

 

「許認可や取引先との都合で、資本金を増やしたい」

「しかし払い込むお金はない」

「じゃあ、繰越利益剰余金を資本金に振り替えちまおう」

 

こういうのが無償増資ですね。

会計(会社法)上、剰余金を減らして資本金に振り替えることは認められています。

この際「その他利益剰余金」と「その他資本剰余金」いずれを減らしてもいいとのことです(株主総会で決議)。

ただし税務上の「資本金等の額」は株主からの払い込み資本という概念ですから、無償増資によっては増加しません。

ちなみにかつては「一度剰余金を配当して、それを出資されたのと同じである」という擬制をしてみなし配当課税を行っていましたが現在はみなし配当課税はありません。

注意点として、地方税においては、平成27年度改正で利益剰余金からの無償増資の額を資本金等の額に加算しなければならないこととなっています。よって均等割が増える可能性があります。

 

会計で

 繰越利益剰余金 / 資本金

という仕訳を切った場合、税務上は資本金等の額・利益積立金額ともに変動なしですから、相殺するように別表五(一)で調整をしなくてはなりません。

 

【別表五(一)】

利益積立金額の計算明細

「資本金等の額」の項目を設けて増加欄に記載

※繰越損益金は会計に合うため、無償増資の分減少してしまっている。上記の調整を加えることで税務上の利益積立金額がプラマイゼロになる。

 

資本金等の額の計算明細

「利益積立金額」の項目を設けて増加欄に△1,000などと記載

※資本金の額は会計に合わせて増加させることになるが、上記の調整を加えることで税務上の資本金等の額がプラマイゼロになる。