租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

誤解していた資本的支出の考え方

税務通信の記事*1を読み、ハっとさせられました。

法人税法施行令第132条(資本的支出)により資産の修理改良等の支出はその資産の使用可能期間を延長させるか価値を増加させる場合には資本的支出となり、一時の損金になりません。これ自体は問題ありません。

重要なのはその期間延長・価値増加の比較対象は「その修理をしない場合」ではなく「通常の管理又は修理をしたとした場合」だということ。ここちゃんとわかっていなかったというか、そこまで条文を分析的に読んでいませんでした。

 

(資本的支出)
第百三十二条 内国法人が、修理、改良その他いずれの名義をもつてするかを問わず、その有する固定資産について支出する金額で次に掲げる金額に該当するもの(そのいずれにも該当する場合には、いずれか多い金額)は、その内国法人のその支出する日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。
一 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測される当該資産の使用可能期間を延長させる部分に対応する金額
二 当該支出する金額のうち、その支出により、当該資産の取得の時において当該資産につき通常の管理又は修理をするものとした場合に予測されるその支出の時における当該資産の価額を増加させる部分に対応する金額

すなわち、例えば建物を取得するとき「ちゃんと通常なすべき修繕をしながら使えば20年持ちそうだな」という予測があり、その範囲で修繕をしていって内容が良くなる分には資本的支出にあたらないということです。

「修繕をしない場合」と比較すれば期間延長・価値増加があるに決まっていますが、その比較ではないと(逆に修繕をしなければ18年、15年しかもたないことになります。それを修繕で20年にするのは当初の予測通りであり、予測に対する増分ではない)。

そうなると実務的な思考様式というか、顧問先との会話としては「その修繕の有無で価値増加があるか」よりも「当初から見込まれていたような通常の維持管理か」が問いとして自然になりそうです。

 

 

今更とも言える基本的論点にも気付きを与えてくれる税務通信、有り難いです。

記事ではより詳しく解説されており、問題となる主なケースについても議論されておりますのでみなさん読みましょう。

*1:「実例から学ぶ税務の核心<第70回>資本的支出と修繕費についての整理」(税務通信3715号)