租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

税理士がビジネス実務法務検定2級(IBT)受けてみた

ビジ法3級から2級へ

今月頭に東京商工会議所が主催するビジネス実務法務検定試験2級を受験(合格)しましたのでつらつらと感想を書いてみます。

なお3級は昨年受けておりまして、3級の感想やIBTの試験方式に関する細かい情報などは前回の記事で。

 

taxlawlabyrinth.hatenablog.com

 

全般的な感想

「それなりに良い試験であり、それなりに難しかった」というのがまずは素朴な感想です。

日頃なんとなく民法会社法に触れている税理士でもある程度しっかり勉強しないと合格は難しいでしょう。

民法中心だった3級に比べて、2級では会社法の比重が高まったことに加えて経済法(独占禁止法など)や知的財産法(特許法など)、あるいは国際法務など応用的な法分野が増えているのが主な内容の違いです。

よく民法の教科書を見ていると「ただし実際には特別法で修正がある」というようなことが書かれていて、ビジネスパーソンとしては「じゃあ実際の解決どうなんのよ」ということがわからない点がもやもやしがちです。

その点ビジ法を学ぶと実践的に適用される法律の知識が得られるのでそのあたりが非常にいいところかなと。この感覚が3級→2級で飛躍的に高まった印象です。

ただし、ビジネスを取り巻く法律は膨大にありますから、どうしても多種多様な法規制を学ぼうとするとひとつひとつの取り扱いは淡泊になりがちです。ですので、勉強したとはいうもののほんのさらっと程度で、使える知識にはなりません。

2級で想定されている法務パーソンは最後は弁護士に相談をする立場でしょうから、それを前提に、民法会社法以外は世の中にはどんな法律があるのかなというメニューを頭に入れる勉強だったのかなという感覚です。

税理士としても2級に受かることで「だいたい仕事で関係し得る主要な法律については一通り概要をさらったかな」という感覚が持てて嬉しいところです。

ただ、色んな法律を広く浅く触れるのは悪く言えば中途半端かな、とも若干思いました。ビジ法3級は文字通りビジネス法務の基礎教養としては素晴らしい試験で、会計事務所職員全員に合格を課してもいいのではとまで言いましたが、その上で2級をやっても「だからどう」ということはあまりないというか…。いえ、もちろんもっと詳しくなっているのですが、はい。

いずれにせよビジ法2級合格は以前からなんとなく目指していたので達成できて嬉しいお気持ちです。そういう達成感はあります。

 

学習について

勉強時間は30~50時間くらいだったでしょうか。5月の末に申し込みをして、そこから本格的に勉強を始めました。平日は仕事終わりにテキストを読んだり読まなかったり、読んでもせいぜい1時間。休日は2~3時間やったりやらなかったり。

 

使用したテキスト

勉強方法としては基本はただ単純に「テキストを読む」というものでした。

使用したのは3級のときと同様公式テキストです。ビジ法試験は公式テキストの知識を問うと宣言されていますのでどうしても公式重視になります。

3級のテキストをべた褒めした自分ですが、2級は試験の内容が前述の通り広く浅い淡泊な感じですので、当然テキスト自体がそうなっています。

広い分野を淡々と説明していくので、けして理解しやすくはありません。図解も具体例も極めて乏しいです。馴染みのない分野についてビジネスパーソンが実際に勉強するならもっと実際にあった事件とか、手触りのある解説がほしいところですね。

記述のトーンも章によって少し温度差があるように思いました。民事訴訟法や国際法務などは実践的な注意点も書かれていて好印象(頭にも入りやすい)でしたが、企業活動をとりまく法規制をズラズラっと並べて説明する章は本当に淡泊で(ボリューム的にやむを得ないこともわかるのですが)、読んでいくのがかなり苦痛でした。

そんなわけで理解のしやすさという点では他のテキストを選ぶのもいいと思います。ただ、書店で立ち読みしたときにどれもそんなに変わらない気がしたし、根拠条文の記載がないテキストもありまして、それは法律学習への態度としてさすがにどーなん、と思ってしまいました(実際根拠条文を六法でひくことは私自身ほとんどなかったですし、それで受かるのはそうなのですが…)。

自分としては①テキストが読みづらかったこと②問題集を回すのが有効そうだったことの理由により、テキストは何周もするとか精読するということはせず、一周とりあえず内容をさらったらあとは参考程度の使用にしました。

 

問題集

問題集も、まずは公式問題集です。

問題集としては良質だと思います。公式テキストに沿っているので学習はしやすく、また解答の解説がしっかりしているので問題集を回しているだけでもテキストを読んでいるのと同じような効果がある印象です。

また模擬問題2回分を収録してくれているのがとても良くて、時間を測りながら解いてみるとIBTに向けて「どのくらいの難易度で、どんなペースで解けばいいのか」という体感が掴めます。これのおかげで本試験で慌てずに済んだ印象です。

細かいことですが、「適切でない組み合わせを選べ」という問題なのに答えが適切な組み合わせになっていたりする誤記がありましたので、正誤表はきちんと確認されるとよいかと思います。

 

深い意味はないのですが今回公式以外にTACの「一問一答エクスプレス」という問題集も使ってみました。これはとても好きな感じでしたね。

予備校の本だけあって頻出の論点に的確に絞ってくれているし、一問一答形式でササっと取り組めるので疲れている日でも取り組みやすく、とてもユーザーエクスペリエンスがよかったです。解説も必要十分ですし、図や表もわかりやすい。

左のページに問題が書いてあり、右のページに解答があるのですが、解答を隠す厚紙が付属していて、それをズラしながらテンポ良く解いていけます。

内容的なことで言えば公式問題集だけで足りるとは思うのですが、個人的には取り組みやすさも含めてこの問題集を回しておいてよかった、買ってよかったと思いました。直前期にはこれを高速で回していました。

 

IBTの細かい点

IBTの流れについては前回の記事参照ですが、ちなみに3点ほど前回との違いがありました。

スマホでパソコンの画面を撮影し、それをカメラに見せるように言われた(モニターに付箋メモなどをする不正への対応)

②身分証をカメラにかざしてゆっくり回転させるよう言われた。前回も今回も事前に画像データをアップロードしており、前回はそのデータの確認で済んだ。

③眼鏡を外してカメラに向かってぐるっと回して見せるよう言われた。前回も今回も眼鏡をかけて臨んだが前回は言われなかった。

上記のうち①については事前の説明書きに記載がありましたので戸惑いはありませんでしたが、②と③は試験官によって対応が異なるのか、規則が変わったのか、よくわかりません。まぁいずれにせよ言われたら対応するだけですので大した事柄ではありません。

 

何気に出費が…

みみっちいこと言うようで嫌なのですが。

受験料 7,700円

公式テキスト 4,620円

公式問題集 3,520円

一問一答問題集 1,980円

合計 17,820円

なんとこんなにかかっていたとは。

支出をミニマムにしたい猛者は「一問一答」だけ買って頻出論点に重点投資、あとはネットで各種法律について学習して挑むという道もあり得るかとは思います(落ちたらまた受験料がかかるし全くおすすめしませんが)。

 

さて次は、重いの覚悟でこれまで学んだ民法を活かして宅建に挑むか、憲法とかもやりたいから法学検定に行くか…。