租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

定款の目的に記載がない事業を行っているときの効力

税理士会の研修*1を見ていて、あーあるあるだなぁと思った話。

定款にはその会社の事業の目的の記載が必要で、会社はその目的の範囲内でしか権利義務を負いません。これは民法の最初の方に書いてある基本原則です。

 

民法第34条

法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

 

しかし実際会社が事業拡大をしていって定款に(少なくとも直接的な)記載のない活動を行っているのはよくある話だと思います。

このとき、当該活動に関しては直ちに法的に無効になるのでしょうか。

 

この点最高裁判所大法廷判決昭和45年6月24日(八幡製鉄事件)によれば「会社は定款所定の目的の範囲内において権利能力を有する、との前提に立ち、目的の範囲内の行為とは定款に明示された目的に限らず、その目的遂行のために直接または間接に必要な行為すべてを含む」とのことです(文章の引用はWikipediaより)。

そして、研修講師の弁護士さんの実務的感覚によれば、ある行為が目的外と判定されるリスクは非常に低いと。

このため現在では目的と事細かに列挙する必要性自体が薄いのだそうです。

 

もちろん対外的に法律行為が無効になるかどうか以外に取締役の責任等との関係で事業目的が問題になる場面もあるようですのできちんと記載しておくに越したことがないのはそうなのでしょうが。

税理士的には顧問先に「新しいビジネスやることにしたんだけどそういうときって定款とか登記とかしないとマズいんだっけ?」と聞かれたときに、少なくとも「目的外で無効」と言われる可能性は低いですと案内できますね(より正確なことは司法書士さんや弁護士さんにパス)。

 

*1:「通勤マルチ:税理士業務に役立つ会社法のノウハウ」