租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

株主総会議事録に取締役の押印は必要か

1.出席や押印の義務は会社法には定めがない

会社法ネタ。税理士の経験的メモです。

決算確定や役員報酬の改定、事業年度変更などで(定時/臨時)株主総会を開き会社が議事録を作成することはもちろんよくあります。このとき、よくあるひな形などでは取締役の記名・押印欄があったりします。

これは必要なのでしょうか。

 

調べたところ、会社法では原則として取締役が株主総会議事録に署名や押印をする義務はありません(会社法318条・会社法施行規則72条参照)。*1

もっと言えば取締役の出席義務すら定かではありません。会社法は314条で株主総会における取締役の説明義務を定めており、説明するからには出席していなければならないのは当然だという解釈もあるのですが、では全員が出席していなければならないのか、欠けていたら直ちに株主総会の決議が無効になるのかなどはさすがにそんなことはないだろうと考えられているようです。

 

(取締役等の説明義務)
第三百十四条 取締役、会計参与、監査役及び執行役は、株主総会において、株主から特定の事項について説明を求められた場合には、当該事項について必要な説明をしなければならない。ただし、当該事項が株主総会の目的である事項に関しないものである場合、その説明をすることにより株主の共同の利益を著しく害する場合その他正当な理由がある場合として法務省令で定める場合は、この限りでない。

 

 

2.定款と登記

ただし実際には定款と登記の問題があります。管見の限りでも意外に多くの会社の定款で

 

「議長及び議事録作成取締役が記名押印する」

「議事録作成者及び出席取締役がこれに記名押印する」

 

というような条項が書かれていて、定款ですから当然これに従う必要があります。

また、登記実務上、会社法で定められていない場合でも押印があった方が安全であるとする見解もあるようです。司法書士の先生の指示に従いましょう。

 

3.取締役会議事録

また、「なるほど会社法はそんな形式的なことを法定していないのね」と漠然と捉えると危険で、取締役会の議事録は署名又は記名押印必須です。余談までに。

 

(取締役会の決議)
第三百六十九条 取締役会の決議は、議決に加わることができる取締役の過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)が出席し、その過半数(これを上回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)をもって行う。
2 前項の決議について特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができない。
3 取締役会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成し、議事録が書面をもって作成されているときは、出席した取締役及び監査役は、これに署名し、又は記名押印しなければならない。
4 前項の議事録が電磁的記録をもって作成されている場合における当該電磁的記録に記録された事項については、法務省令で定める署名又は記名押印に代わる措置をとらなければならない。
5 取締役会の決議に参加した取締役であって第三項の議事録に異議をとどめないものは、その決議に賛成したものと推定する。

 

*1:旧商法時代は義務でした。また、取締役会を設置していない会社で代表取締役を選定した株主総会の議事録については出席取締役全員の実印での押印が必要という例外はあります。