租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

〔書籍〕『税理士の実務に役立つホットな話題』

関根稔 & taxMLのメンバー『税理士の実務に役立つホットな話題』(財経詳報社2022)


 

知る人ぞ知る、関根先生を中心としたメーリングリストのログを書籍化したもの。その性格上、良い意味でも悪い意味でも「博識な同業者と最近のトピックについて雑談できる」という感じの本です。

読んでいる感覚としてはTwitter的というか、難しい文章が長々続くことはなくトピックごとに数個コメントがあるという感じでどんどん進んでいくのでとても読みやすいです。気軽につらつらと読んで同業者の温度感とか最近の論点を知るのに有益かと。

内容的には結構資産税の話が多いような気がします。半分以上は資産税でしょうか。税務ではない周辺の話題もけっこうあり、個人的にはそれが何気に面白かったです。

実務書的に各トピックに対する「答え」が書いてあるわけではなくて各参加者の感想レベルで終わっているものも多いためその辺は注意点でしょうか。

 

2つほど気になったトピック。

 

「内容の異なる相続税の申告書」(62頁)

相続人ごとに内容の異なる申告書を出したらどうなるかについて。必ず全く同じ内容の申告書に修正してもらうと国税OBが言っていた、という発言もあれば、バラバラで申告したけど何も言われず時効を迎えた、という発言もあり。この辺の実体験が大事な部分で同業者の経験が聞けるのは貴重です。

 

「確定した決算と法人税の申告」(22頁)

株主間で揉めてお互いに50%とれず株主総会が開催できないときはどうなるかについて。「税務署は決算確定日なんて気にしてない」という指摘も「会社計算規則で1年超の会計期間が認められているのだから決算確定前でも無効になるはずがない」という指摘もわかるのですが、コメントはいずれも「決算確定=株主総会による承認」を前提にしている点が少し違うかなと。

判例では「実質的に法人の意思にもとづいてなされているか」が重視されている印象ですから、その点からのコメントがあってもよかったように思います。

 

taxlawlabyrinth.hatenablog.com

 

P.S.

『税理士の実務に役立つクールな話題』という近著が出ているのに気付いてませんでした。