租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

会計事務所にはじめて勤める未経験者がまず読むべき本

 以前書いた会計事務所初心者向けの決算のおすすめ本の記事が意外と読まれているようです。

taxlawlabyrinth.hatenablog.com

  そこでもうひとつ、過去の自分に向けた「会計事務所に就職したらこれを読め」という指南本を書いておきます。どちらかというとこちらの方が、当時全くの未経験で学生から会計事務所(税理士事務所)に就職した筆者が「仕事? まぁまぁわかってますよ」という顔をするために隠れて熟読してめちゃくちゃ参考にしていたものです(いえ、もちろん仕事は素直に教わっていましたが実際の仕事とはどういうものか不安でしたので)。

 

 

  本書『会計事務所の仕事がわかる本』の魅力は

 「単なる税制や理論の説明ではなく、会計事務所の仕事の進め方を極めてリアルに説明している」

 ことに尽きます。

 

 例えば所得税の理論サブノートを全て暗記していたとしても、実際の確定申告業務をどのように進めるべきなのかはよくわかりません。会計事務所の一年というのがどのようなサイクルで成り立つものかもピンときません。

 それに対してこの本は会計事務所職員向けのマニュアルという観点から

 「確定申告において重要なのは顧問先に預かった資料を紛失しないこと」

 「月初の会計事務所には牧歌的な空気が流れている」

 といった、会計事務所業務のリアルな注意点や空気感をほとんど全ての業務範囲にわたって詳細に書いてくれています。

 就職して仕事を始める直前の筆者は「なるほど…! そうなのか…!」とマーカーを引きながら貪るように熟読しました。仕事を始めてみると本書に書かれている内容通りの部分が多く、いわゆる「これチャレンジで見たことある!」状態になることができました。

 もちろん就職した後も、未経験の仕事を振られる度に本書で予習をすると現実的な注意点を知ることができ有益でしたので繰り返し読みました。それこそ確定申告業務であれば、はじめのうちは単に計算の内容に夢中になりがちですが「資料の紛失に注意」といったことは気付きにくいです。「資産税は経験者によるチェックが必須」などの業務ごとの温度感のようなものも、言われなければ意外とわからないものです。

 

 これはそれ自体問題があることかもしれませんが、現実として、中小零細の会計事務所は教育システムがきちんとしていない場合が多いと思われます。「就職したらいきなり丸投げで担当を割り当てられた」といった話も珍しいものではありません。

 本書はとても実用的な会計事務所職員マニュアルと言えるものであり、そういった厳しい環境で自分を守るための非常に強力な武器にもなり得るものです。もちろんきちんとした教育環境や、既に会計事務所での実務経験がある人にとっても、同じ業界の他の人の仕事の仕方や心構えといった意味でおおいに参考になるものと思われます。

 同じような種類の本は他に何冊か買いましたが、本書が圧倒的ベストです。

 会計事務所の仕事を勉強したいけどまず何を読んだらいいか、という方には迷わず本書をおすすめします。