租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

保険の名義変更プランに関する通達の改正

1.名義変更プラン

数ヶ月前実務界で大騒ぎだったものを今更記事にするマンです。

生命保険の名義変更プランに関する記事は読者の少ない本ブログのわりにはよく読まれている記事なので、たとえ今更であっても情報のフォローアップはしておくべきなのではないかと思いまして。

 

taxlawlabyrinth.hatenablog.com

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ざっくりここで内容を繰り返すと、数年間は解約返戻金が極端に低く抑えられる保険に法人で契約し、その後個人が低解約期間中に買い取り、解約返戻金が上がった後に個人で解約して利益を受ける(一時所得のハーフタックスで)というものです。

人為的に低く抑えた解約返戻金相当額で買い取ることができるのは不合理なのではないかと長らく議論されてきたわけですが、いよいよその評価が通達で見直されることになりました。*1

 

2.通達の対応

具体的には所得税基本通達36-37が改正され、解約返戻金が法人の資産計上額の70%未満である保険契約については資産計上額で保険の価額を評価することになりました。

所得税法36条は収入金額に関する規定ですから、その条文に係る通達の36-37は個人の収入金額の計算についての説明をしていることになります。

仮に法人に500万円で資産計上されている保険契約なら仮に解約返戻金が低かったとしても500万円で買い取らないと、500万円の収入が認定されて課税が生じてしまいます。例えば法人から経済的利益を受けたものとして役員給与として課税される(法人は損金不算入)ことになるでしょう。

 

 

3.適用時期等

上記の通達改正が適用されるのは「令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給」です。また前提として法人税基本通達9-3-5-の2の適用を受ける保険契約に限られますから対象は同通達が適用される令和元年7月8日以後に法人で契約した保険のみになることになります。

適用対象をまとめると

  1. 解約返戻金が資産計上額の70%未満
  2. 令和3年7月1日以後に行う保険契約等に関する権利の支給
  3. 令和元年7月8日以後に法人で契約した保険

となります。2番目の要件は現在日付以降という意味では全てあてはまりますから、よくよくアンテナを張るようにしましょう。*2

 

*1:法律家的な目線では、保険に関する問題が法令ではなく通達マターになってしまっていることに疑問は覚えるべきなのでしょうが、「通達行政はけしからん!」と声を上げたところで「そうですね」で終わる話な感は否めません。

*2:あからさまに狙って仕組むタイプの取引なので我々税理士としては漫然と忘れるということは考えにくいですが。