1.仕入の前倒し
もうすぐ決算期末の会社が思ったより大きく利益が出ているとします。そうすると「期末になんか経費使おうかな」と考えだすのは人情です(合理性は別として)。
その際、当期は消費税の簡易課税、翌期は原則課税のときに注意すべき点を素朴に考えてみました。
まずは課税仕入れの面。中小企業の経営者でよくあるのは「車買おうかな」というやつです。
ご存じの通り期末に車を買って固定資産計上で減価償却、中古車で耐用年数が少ないとしても若干の償却費しかとれません。償却費10万とって法人税3万円減ったくらいでいいところでしょうか。
税理士としては経営者の気分も大切にしたいし「どうせそのうち買うなら買ってもいいんじゃないですか?」なんて気軽に答えそうにもなりますが、簡易から原則に切り替わるときには注意が必要です。
というのも当然ながら簡易課税の期間中に取得してしまうと課税仕入れがとれないからです。100万円の車で、1ヶ月後に取得すれば課税仕入れ10万円をとれたし償却費も期間がズレるだけでどうせ全額とれるのに、償却費10万円を前倒しに計上するために課税仕入れ10万円をぶっ飛ばしてしまうなんてことが起こり得ます*1。
「経費は前倒しで計上したい」という通常の原則が逆になる局面ということです。
2.売上の後ろ倒し
「売り上げは後ろ倒しで計上したい」という原則も簡易→原則のときは逆になり得ます。
通常は「取引先の了解を得て、期末付近の収益実現を翌期に後ろ倒しにしようかな」といったことがあり得ます*2。
しかし、売上だけ立てることを考えると、同じ売上を立てるなら簡易の期に入れた方が「みなし仕入れがついてくる」形になるので消費税では有利です。
100万円の売上を翌期にズラせば10万円の消費税を丸々受ける形になりますが、当期に上げれば(例えば第五種なら)5万円はみなしで課税仕入れがとれます。
100万円に対する法人税を繰り延べるのとどちらが有利かは状況によるかと思いますが、当期・翌期がともに原則のときと状況が異なることは間違いありません。
かなり単純化して書いたのでこんなに簡単に言っていいものか微妙な部分はあるかもしれませんが、関与先との会話で気を付けないとなぁと思うポイントを述べてみました。