給与の支給が支払者にとって課税仕入れにならないことは言うまでもありません。
これに伴って(?)、例えば交際費や福利厚生費が税務調査において給与認定されると、(源泉徴収義務が発生し役員給与であれば損金不算入の加算調整が必要になるのと同時に)消費税の課税仕入れも否認され修正申告が必要であるとする説明をネット上で時々見かけます(役員給与のトリプルパンチ、などの言い方で)。
しかしこの理解は誤りではないでしょうかというのが本記事のテーマです。
例えば
(1)従業員への報償として文房具店から高級万年筆を購入して
(2)それを従業員にあげる
という取引を考えてみます。
このとき、(2)の時点で課税仕入れが生じないことには争いがありません。問題は(1)の取引が課税仕入れになるのかどうかです。
規定を確認してみましょう。課税仕入れの定義規定である消費税2条1項12号です。
十二 課税仕入れ 事業者が、事業として他の者から資産を譲り受け、若しくは借り受け、又は役務の提供(所得税法第二十八条第一項(給与所得)に規定する給与等を対価とする役務の提供を除く。)を受けること(当該他の者が事業として当該資産を譲り渡し、若しくは貸し付け、又は当該役務の提供をしたとした場合に課税資産の譲渡等に該当することとなるもので、第七条第一項各号に掲げる資産の譲渡等に該当するもの及び第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるもの以外のものに限る。)をいう。
万年筆の購入は完全に「事業者が事業として他の者から資産を譲り受け」ることに該当します。そして括弧書きによる除外ですが、そもそも役務の提供の問題であり、「給与等を対価とする役務の提供」はここでいう役務の提供に入ってこないとする内容です。ここで除かれるのはあくまでも給与を支払う相手方である従業員・役員ですので、資産の取得の相手方は関係ありません。
さらに消費税法基本通達11-2-3を確認します。
(現物給付する資産の取得)
11-2-3 事業者が使用人等に金銭以外の資産を給付する場合の当該資産の取得が課税仕入れに該当するかどうかは、その取得が事業としての資産の譲受けであるかどうかを基礎して判定するのであり、その給付が使用人等の給与として所得税の課税の対象とされるかどうかにかかわらないのであるから留意する。 (下線筆者)
使用人等というのは役員又は使用人のことです(消基通11-2-1)。
要するに課税仕入れなのかどうかはあくまでも資産の譲受けかどうかだけを見るもので、それが現物給与になるとかそういうことは関係ない、ということです。