租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

キャッシュ・フロー計算書を理解してなくても100%作れる「ちぎりCF計算書」(1)

 損益計算書貸借対照表は見慣れているけどキャッシュ・フロー計算書がよくわからない。特に間接法がわからない」とよく言われます。

 これに関して「簡単にわかる説明」のようなものはネット上にもたくさんありますので、私がさらに似たような試みを行う意義は乏しいかもしれません。

 しかし色んなアプローチがあっても損はしないもの。ここではちょっとした遊びとして、自分が勝手に考えた*1邪道な作り方である「ちぎりキャッシュ・フロー計算書」の話をしてみようと思います。

 ただでさえ難解だという苦手意識をもたれやすい分野ですので会計事務所の先輩後輩の会話形式でいってみましょう。

 

- - - - - - - - - -

 

先輩「鈴木君、A社のキャッシュ・フロー計算書(以下、CF計算書)を作ってみてくれない? 社長が現預金の動きがしっくり来ないから説明してほしいって」

 

後輩「田中先輩、僕、CF計算書って苦手なんですよね…。何回か説明を読んだことはあるんですけど、どうも感覚が掴めなくて」

 

先輩「そうだよね。こういう長い表が出てきて、わかるようなわからないようなって気持ちのままとりあえず会計ソフトから印刷してみたりしてね」

 

 

f:id:taxlawlabyrinth:20200608212557p:plain

 

後輩「あぁ、そうです、そうです。見ているだけで目がチカチカしてくるというか…」

 

先輩「でも、間接法のCF計算書が言おうとしているのは損益計算書の利益とキャッシュの増減は違う、その原因は何か?ってことだけなんだよ」

 

後輩「はい」

 

先輩「そうするとまず押さえるべきポイントは決まってきて、(1)損益計算書の利益と(2)当期のキャッシュ増減。これをまず押さえれば、計算書の見方はわかるよ」

 

後輩「どこを見ればいいですか?」

 

先輩「CF計算書で言うと一番上と一番下。これは鈴木君にも物凄く馴染みがある情報で、一番頭の利益はPLの利益だし、一番下の現預金は期首と期末のBSから拾えばいい。CF計算書の趣旨と結論はここで、その間の項目は両者のズレの内訳をうだうだ並べているに過ぎない。いまは一旦”利益とキャッシュのズレ”とでもしてひとつにまとめてしまえばいいよ。この例だと利益は800万円の黒字なのにキャッシュは300万円の減少で、原因はともかく1,100万円のズレがあることがわかる

 

f:id:taxlawlabyrinth:20200608212734p:plain

 

後輩「えぇぇ、そんなことしていいんですか!? たしかにこれなら僕でも作れますけど、これじゃ中身が何もわからない…」

 

先輩「まぁ落ち着いて。僕の意見としては、(間接法の)CF計算書がわからない人は、この当たり前の出発点をわかってるようでわかってない場合があると思う。間接法CF計算書の中には、現預金の動きそのものではなくて利益とのズレが書いてある。それで、これならExcelにゼロから作れと言われても簡単でしょ? PLと2期分のBSを見て、3つの数字を拾ってくるだけだ。とにかくまず、手を動かしてこれを作ってみることが大事」

 

後輩「たしかに、まずPLの利益があって、現預金があって、ズレが出て来る……それはわかります」

 

先輩「うん、まずは当たり前だと思うことを馬鹿にせずにきちんと固めよう。そして実はCF計算書の骨格はこれでもう出来ている。鈴木君はいまの一瞬でゼロからExcelにCF計算書を作れたんだよ。自信を持とう」

 

後輩「マジですか…。嬉しいような気もするけど、なんだか騙されてるような気もします。これお客様に見せるわけにはいかないし、なんかこうもっと、営業活動によるなんちゃらとか、あるじゃないですか」

 

先輩「まぁ、そうだね。CF計算書が出来たというのは大げさに言った(笑)。でもさっき言ったように、あとは現預金の増減の内訳をどれだけ細かく並べるかの問題に過ぎないんだ。PLの作成で言えば勘定科目をどこまで細かく分けるか、みたいなね。今はきちんとした制度上のCF計算書じゃなくて邪道だけど主な中身だけを作成することを考えて、”利益とキャッシュのズレ”としてまとめた〔利益とキャッシュのズレの塊〕をちぎっていこう」

 

後輩「ちぎる?????????」

 

→(2)へ続く

taxlawlabyrinth.hatenablog.com

 

*1:しかしきっと他の人も同じことを考えて来たであろうことは想像に難くありません。