租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

「租税法」と「税法」

 法分野としての税の勉強を始めて誰しも疑問に思うのが

 

  「租税法」と「税法」ってどう違うの?

 

 というものかと思います。結論から言えばどちらも税に関する法領域を指す一般的な言葉であって、厳密にどちらがどういう意味、というのは決められていないと思います。

 よく言われるのはいわゆる東大系の研究者は「租税法」と言い、京大系は「税法」と言う、というものです。

 たしかに東大の金子宏先生の基本書は『租税法』です。その他東大系の先生方の著書を見ても水野忠恒『体系租税法』、中里実編『租税法概説』、増井良啓『租税法入門』、佐藤英明『プレップ租税法』等々、租税法と銘打たれています。

 他方、京大系を見ますと清永敬次『税法』、谷口勢津夫『税法基本講義』など、なるほど税法というタイトルです(もっとも最近は谷口ほか『基礎から学べる租税法』や岡村忠生『租税法』など、ランダムな傾向にあります)。

 このように呼び方が分かれている経緯には学会をめぐるアレコレなどもあったと言われていますが、詳しくは存じ上げません。

 ではニューカマーがどちらで呼ぶべきかですが、正直、ただの呼び方の問題ですので、どちらでもいいと思います。細かいことにこだわるほうがくだらないかと。

 ただ、そのようなことは前提として、個人的には下記のなんとなくの感覚により「租税法」推しです。

 

・法領域の主題となる事柄を「税」という一文字で表すとなんとなく据わりが悪く、「租税」と呼んだほうが落ち着くこと。「税法」ではなく「租税法」としたほうがていねいで格調高い感じがすること。

・「○○税法」という法律はいくつも存在するが「租税法」という名前の法律は存在しないため、条文が存在する個別の法律の話をしているのではなく租税に関する法領域を抽象的に呼んでいるのだという雰囲気が伝わりやすく思えること。

憲法30条や84条で使われている用語が「租税」であること。法人税法55条など法律にも用いられていること。

 

 結局は、どちらでもいいという話ですね。