租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

実はもう一般的否認規定の世界に住んでいる?

 租税回避に対する一般的否認規定の導入は近年ホットなトピックとなっています。*1

 世界の先進国では既に一般的否認規定の導入が進んでいるということで、日本でもゆくゆくは導入されることになるのではないかと見られているようです。日本では現状同族会社や組織再編に限定してやや一般的な行為計算否認規定(法人税法132条、132条の2等)があるにとどまると説明されます。

 しかしふと思ったのですが、税理士の目線からすると、我々が日々仕事で相手にする中小企業の99%は同族会社です。ですので、見方によっては(実験的で乱暴な見方であることは承知ですが)、我々は既に一般的な否認規定の屋根の下で生活していると考えた方が実態に近いのかもしれません。*2

 それでは通常の中小企業の実務で行為計算否認規定を使った更正処分が打たれることがあるのかと言われるとそれはもちろん全然ないのですが、私自身、お客さんにアグレッシブな処理を提案されたときなどには「これは行為計算否認の対象になるのでは?」と冷静に考え直す材料にはなっています。そういう意味では、実はもう一般的な否認規定があるような世界に暮らしていて、これから実際に一般的否認規定が導入されたとしてもそれほど焦ったり仕事のやり方を変えたりする必要はないのかもしれません。正当な事業目的の下の真っ当な税務。それだけです。

*1:参考文献として、例えば財務省「フィナンシャル・レビュー<特集>税制特集4―BEPSと租税回避への対応」平成28年(2016年)第1号(通巻第126号)。

*2:もちろん国際的に言われる一般的否認規定の内容と日本における同族会社の行為計算否認規定の内容の相違はあるでしょう。