租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

「お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください! 」

 

少し前に、税理士の大河内先生という方が書かれた『お金のこと何もわからないままフリーランスになっちゃいましたが税金で損しない方法を教えてください! 』を読みました。

もちろん私は税理士ですのでこの本で税金のことを勉強しようという気持ちはないのですが(全て知っている情報です)、情報というのは同じ内容ならいいというものではなくて伝え方がとても大事です。同業者としてどういう風に知識を表現し伝えているかを勉強させていただきました。

 

結論から言うと本書は読みやすく実用的な中身が詰まった非常に良い本だという印象です。

ちょっとした挿絵適度に絵が入っているわけではなくマンガ主体で進んでいくので難しい税金の本と構えずに読めますし、マンガ主体だからといって情報が薄いということもなくフリーランスならそこが気になるだろうなぁというポイントが的確に押さえられて情報が凝縮されています。

税理士や学者が執筆するとどうしても「税制を説明する」という視点にとらわれてしまうのですが、本書は「フリーランスになるにあたってお金に関することを結局どうしたらいいのか」という納税者の側の視点が徹底されています。例えば税金だけでなく社保に関することも説明されていたりするのは、フリーランスの人が困って手に取る本としてはとても重要だと思うのですよね。

こういう本を書こうと思うと何をどこまで書くか非常に悩むところかと思いますが、取り上げられているトピックや説明も非常にツボを押さえた実用的なもので、偉そうな感想ですが感心してしまいました。単に形式的に「制度がこうなっています」という説明だけではなく実際の手続きではこんな感じというところまで言及されているのがさらにプラス。

 

最後に同業者目線のことを言えば、本書は会計事務所における職員の教育にも使えるのではないかなぁと思ったり。フリーランスの人に相談されたらこういうところをこういう風にケアしてあげましょう、というお手本のような本ですので。