租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

「財政法と憲法・私法」『財政と金融の法的構成』

 中里実『財政と金融の法的構造』(有斐閣2018)より、本日は第4章第2節「財政法と憲法・私法―財政の法的統制」。元論文はフィナンシャル・レビューでオープン(PDF)です。

 

 

 本節は、財政に関する法的統制を考えるにあたって憲法や財政法の国家内部の手続きを考えるだけではなく、国家と国民との関係に横たわる私法的な見方も重要であるということを整理しています。

 その裏付けとして中世フランスの歴史を概観し、主権が私法的な財産権としての領主権から発展してきたことを確認します。結局、国家の主権とはいっても財産関係は依然として私法的な財産権によって把握されているのであって、そこにおける私法的視点は重要であると。

ここで留意しなければならない点は、国家や主権が財産権を作り出したのではなく、逆に、私的財産権としての性格を濃厚に有する領主権から国家や主権が生まれたという点である。(187頁)

 このような記述は中里史観・中里公法観の要諦ともいえるものでしょう。

 本節で示されている財政法研究の今後の方向性は非常にワクワクするものですね。