租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

確定申告の「撤回」

1.申告不要制度

給与所得者で給与収入が2,000万円以下でありその他の所得が20万円以下の場合、年金受給者で年金の額が400万円以下でありその他の所得が20万円以下の場合、確定申告は不要です(所得税法121条)。

この制度を知らずに20万円以下の所得を申告してしまった場合、当該申告を「撤回」して一旦納めた税金の還付を受けることができます。

恥ずかしながら不勉強にして知りませんでした。「誤りやすい事例」として案内されていたりするようですね。

2.通達121-2

申告の「撤回」など聞いたことがなかったのでいったい何条が根拠なのだろうと調べてみると、根拠となるのは法律ではなく所得税基本通達121-1でした。

(確定所得申告を要しない者から提出された確定申告書の撤回)121-2 申告書に記載されたところによれば法第121条各項の規定に該当することとなる者から提出された申告書で第3期分の税額が記載されているものにつき、これらの者から当該申告書を撤回したい旨の書面による申出があったときは、その申出の日に当該申告書の撤回があったものとし、当該申告書に係る既納の第3期分の税額を還付する。(平23課個2-33、課法9-9、課審4-46改正)
(注) 1 申告書を撤回した者は、改めて確定申告書を提出するまでの間は、無申告者となることに留意する。

2 当該第3期分の税額に係る過誤納金については、その撤回の日に更正の請求に基づく更正があったものとして通則法第58条第1項《還付加算金》の規定を適用するものとする。

法的根拠が不明ですが更正の請求に準じて考えるようです。

「書面による申出」とされていますが特に書式が定められているわけではないようで、 申告の収受日付あたりを書いて撤回したい申告を特定できるようにしておけばいいのでしょう。

3.訂正申告・修正申告・更正の請求

以下は書くまでもないですが検索で来られた方が誤解されないように一応。

申告をなかったことにしたいのではなく単に一度した申告の内容が間違っていたので直す場合、3/15までの期限内であれば単に正しい内容で申告し直せば以前のものを無視してそれを正規の申告として扱ってもらえます(訂正申告)。

期限後の場合、税額が増える場合は修正申告、減る場合は更正の請求という異なる手続きとなります。