租税法の迷宮

とある税理士による租税法・税実務の勉強ノートです。

税務

法人から個人への名義変更プランの課税関係についてのメモ(後編)

※2021年9月追記 本記事で議論している名義変更プランについては通達で手当てがされ、(率直な言い方をすれば)脱法的な個人への利益移転としては使えなくなりました。 具体的には、解約返戻金が資産計上額の7割未満となる保険の価額は資産計上額で評価するこ…

法人から個人への名義変更プランの課税関係についてのメモ(前編)

※2021年9月追記 本記事で議論している名義変更プランについては通達で手当てがされ、(率直な言い方をすれば)脱法的な個人への利益移転としては使えなくなりました。下記の記事をご参照ください。 taxlawlabyrinth.hatenablog.com 1.名義変更プランの概要…

高額特定資産の取得に関する規定のおさらい

簡易課税の選択の検討をしていて、初めて高額特定資産の規定にひっかかることに気が付きました。 高額特定資産を取得した場合の規定というのは消費税法の平成28年改正における目玉と言われたものです。 このあたりの消費税の部分的な租税回避規定は体系性が…

相続人ごとに異なる相続税申告書の提出

先日顧問先で打ち合わせをしていて、相続人ごとにそれぞれ(別々に作成した)相続税の申告書を提出することは可能か、という話になりました。 結論から言えば可能です。 実務ではひとつの申告書に相続人全員が署名・押印した申告書を見ることがほとんどかと…

事前確定届出給与による節税策について

役員給与は期首に決めておかなければ損金にならないのが原則です。 賞与のような雰囲気で支給される事前確定届出給与も、文字通り事前に確定させておいたものが損金になるに過ぎません。しかもこれに関する判定はけっこうシビアで、例えば100万円と届出てお…

簡易課税の場合における棚卸調整非適用の条文操作

消費税において免税事業者から課税事業者に切り替わったとき、免税事業者である期間中に仕入れた期首棚卸資産があると、これに係る消費税額は仕入れに係る消費税額に足し込むことになります。 消費税法の試験では重要度が高くない論点だったように記憶してい…

事前確定届出給与にする理由

周知の通り、現行の法人税法では役員給与に対する種々の損金算入規制がなされており、通常の役員給与でその規制を受けないのはおおまかには①定期同額給与②事前確定届出給与③業績連動給与の3類型に限られます。 今回取り上げたいのはこのうち事前確定届出給与…

税理士にとっての租税回避概念の使い道

前回の記事に続いて租税回避の話題で。 講学上の租税回避の議論は、前回もうにゃうにゃ論じたように、かなり抽象的で現実の税務とは距離があるようにも思えます。 しかし、私見としては、中小企業の税務を行う税理士にとっても租税回避をめぐる議論を学び、…

実はもう一般的否認規定の世界に住んでいる?

租税回避に対する一般的否認規定の導入は近年ホットなトピックとなっています。*1 世界の先進国では既に一般的否認規定の導入が進んでいるということで、日本でもゆくゆくは導入されることになるのではないかと見られているようです。日本では現状同族会社や…

減価償却の自己金融効果というまやかし

今、ある法人税法の本を楽しく読んでいるところなのですが、損金の章に「減価償却の自己金融効果」の話が出て来てげんなりしてしまいました。 私はこの減価償却の自己金融効果というやつが、どうしても意味がわかりません。資金の流出を伴わない費用だから減…

生命保険の実質返戻率は意味不明

税理士の仕事と切っても切れない関係にあるのが保険(ここでは特に法人で契約する生命保険)です。いざというときのための保障はもちろんのこと、福利厚生や退職金の積み立て、果ては節税目的まで、様々な場面で保険と関わることになります。 そんな中、以前…

税務における法的思考と会計的思考

税務実務は法的思考を尊重すべき 税務の現場にいてよく思うのが、税理士の実務では簿記の仕訳で考える会計的な思考が強く、良くも悪くも法的な思考は前面に出てこないということです。 これはそもそも税理士に法学部出身者が少なく、多くは経営学部・商学部…